Restivo L, Vetere G, Bontempi B, Ammassari-Teule M.
J Neurosci. 2009 Jun 24;29(25):8206-14.
「短期記憶から長期記憶へと変わっていく過程で、海馬から大脳皮質へ移っていく」という話の裏付け。
音と電気ショックにより、条件つきの恐怖記憶をつけられた動物の脳内で、海馬と大脳皮質(前部帯状回)をゴルジ染色し、樹状突起のスパイン密度を調べた。
記憶形成から1日後(Recent)には海馬でスパイン密度の上昇があった。36日後(Remote)には皮質で同様の変化がみられた。
恐怖記憶形成の直後に海馬を破壊すると、36日後の恐怖反応は軽減し、皮質のスパイン密度は低下した。
しかしこの海馬破壊を24日目の時点に変更すると、36日後の恐怖反応は通常(海馬破壊なし)条件と同等で、皮質のスパイン密度上昇も保たれた。
すなわち、24日目までに海馬が存続していることが、皮質における恐怖記憶形成に必要であることが分かった。
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行動実験と組織染色・鏡検というシンプルな技法の組み合わせで、明解な結果を導いた論文。こういうのを見ると大したもんだなあと思う。
他の人のやった抄読会資料をもとに書いたので、ちょっとウヤムヤ感があるなあ。
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Photo:
Citrus natsudaidai over white walls of Hagi castle town,
Kikuya Yokocho, Hagi, Yamaguchi, Japan
2年前の論文ですが、あるイベントを体験させた後に、海馬や皮質を時系列のどこかで破壊して記憶がどうなるのかを見るという点では流行りですかね。
返信削除記憶の入り口が海馬であることは良いとして、どこに情報が移行するのかを、単一部位を破壊して様子を見ていくことが、人の記憶情報の貯蔵に対して臨床的に有意味なものに発展するのか、注意してfollowしたいですね。
今回の論文も、その部位(前部帯状回)のスパイン上昇密度が本当に核心的なのかまではわかりませんよね...。