2011年8月6日土曜日

脳活動を意志の力で制御する

On-line, voluntary control of human temporal lobe neurons.
Cerf M, Thiruvengadam N, Mormann F, Kraskov A, Quiroga RQ, Koch C, Fried I.
Nature 2010 Oct 28;467(7319):1104-8.

内側側頭葉MTLはmodality-independantな(視・聴覚刺激時、想像・想起時を問わず)ある概念を表象している可能性が示唆されていた。
では、その領域での脳活動(神経細胞の発火頻度)は意志の力でコントロールできるのか、という研究。
 コントロールできているかを評価するために、fMRIなどの間接的機能画像法ではなく、Brain Machine Interfaceを使っている。
被験者は12名の難治性てんかん症例で、てんかん焦点同定を目的に頭蓋内電極留置術後の落ち着いた患者。
彼らに、幾人かの有名人の写真を見せたとき、側頭葉内の特定の部位で発火頻度が上昇することが分かった。具体的にはParahippocampal cortex, Hippocampus, Amygdalaといった領域。

そこで、特異発火部位の異なる2枚の写真が、50%:50%で透かして重なるように合成表示するプログラムを作成して、Fading taskを実施した。
被験者の2つの脳部位の発火頻度を100msという短い時間毎に算出し、その発火頻度上昇が優位な方に対応する写真の濃度を+5%だけ明瞭にし、劣位な方に対応する写真を淡く(-5%)していくようになっている。
例えば、Marilyn MonroeとJosh Brolinの二人の写真が、それぞれ50%の濃度で重複透過して1枚の写真となって表示されている。
被験者はこれを見ながら、「Marilyn Monroeをくっきり(100%)、Josh Brolinを見えなく(0%)しろ」とだけ指示される。
そうしてMarilyn Monroeの声、エピソード、映画、顔つきなどを考えると、実際に10秒ほどで写真はMonroeだけをくっきり(100%)表示することが出来た。
すなわちMonroeに対応した脳部位での発火頻度上昇を、意識して持続することが出来たことを表している。

ちょっと説明しにくいのでこちらの動画も見てもらえれば。
http://www.youtube.com/watch?v=3atwycvhoRk

対照実験が出来ないかと思いきや、ランダムな発火活動を計算上再現し、その場合のFadingの成功率より有意に高いということから、偶然の結果である可能性を否定している。

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この研究のすごいところは幾つもあれど、被験者がほんの数回練習しただけで、要領を掴むことができたということではないだろうか。
不思議なことに、この点について筆者らはあまり触れていない。

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脳外科医、精神科医、放射線科医、それに理工系研究者が出会って初めて出来る研究だと思う。
理工系はすごいなあ。

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Photo:
Paper Castle in Umihotaru Parking Area, Chiba, Japan

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