2012年7月30日月曜日

非認識下では恐怖は素早く獲得され、すぐに忘れられる

Raio CM, Carmel D, Carrasco M, Phelps EA.
Curr Biol. 2012 Jun 19;22(12):R477-9.

   脅威の可能性を持った刺激に対して学習していくことは適応能力の一つである。

   ある視覚刺激が脅威を持った刺激と組み合わされたとき、生理学的及び神経学的反応を示すようになる。

   さて、この視覚刺激による関連学習が我々の意識に上る時と、上らない時で違いはあるのだろうか?

最近の意識と情動学習に関する総説により、意識の有無によって神経活動のパターンや行動・生理学的反応のタイムコースが異なることが示唆されている。

この研究はヒトでの恐怖条件づけ課題により、上記の示唆を確かめようという研究である。

この研究では研究デザインが注目すべきものだと思う。

continuous flash suppression (CFS)を使用することで、意識に上らない視覚刺激に対してうまく関連学習を成立させている。

CFSでは被験者に対してミラーステレオスコープ(反射式実体鏡)を通して視覚刺激を提示する。この際、非認識群では左目側のみCS(電気ショックと組み合わさる可能性のある画像)を表示し、右目側はモザイクを表示させる。こうすることで、被験者はCSを認知できなくなるらしい。
しかしながら、CS+(電気ショックが与えられた画像)に対して生理学的反応(SCR)を示すことから、CS+を認識できていないものの電気ショックとの関連をしっかりと学習しているようだ。

著者はこの課題を用いることで主要な発見として以下の2点を報告している。
1)非認識下では脅威刺激(CS+)に対して初めのうちは強く反応し、徐々にその反応性は抑えられていき、非脅威刺激(CS-)に対する反応性と同程度になる。

2)認識下では初めのうちはCS+とCS-に対する反応性は同程度であるが、徐々にCS-に対する反応性が減少していき、非認識下のCS-に対する反応性よりも下がる。

つまり、脅威刺激が意識に上らない場合はとりあえず過剰に反応する。逆に刺激が意識に上る場合、脅威刺激に対して過剰な反応を示さず、安全な刺激に対する反応性が低下するようだ。

この研究ではさらに、非認識下でのCS+への反応性の低下が恐怖消去(Fear extinction)のような学習によるものか?それとも関連学習を忘れて(erase)しまったのか? についても検証している。

CS+に対する反応性が過剰な条件でCS暴露を終えて、翌日に記憶のテストを実施している。テスト時においてはCS+に対する反応とCS-に対する反応は同程度であったので、非認識下では脅威刺激との関連学習を忘れてしまったのだろうと結論づけている。

  一連の研究内容をまとめると題名にある通り、『非認識下では恐怖は素早く獲得され、すぐに忘れられる』ということのようだ。

******************************************
  自分ならこの内容でcurrent biologyに論文を出そうとは思えない。。。
まだまだ勉強不足である。
もっと投稿雑誌の選定時の判断基準に関して勉強していこうと思う。

*********************
Photos: Twilightscape in Tokyo Disney Land

0 件のコメント:

コメントを投稿