2012年7月17日火曜日

唾液コルチゾールは、うつ病のエンドフェノタイプとして有効か

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22703642

The effect of escitalopram versus placebo on perceived stress and salivary cortisol in healthy first-degree relatives of patients with depression-A randomised trial.



うつ病患者の第一度近親者で無作為割り付けを行い、SSRIとプラセボ投与群の二群にわけ、認識されるストレスと唾液コルチゾール値の影響を調べた論文である。

唾液コルチゾールは中間表現型(Endophenotype)で、唾液コルチゾール検査は、簡単で非侵襲的でストレスがないため、HPA系のストレス反応システムの評価法として知られている。
この研究者らの最近の研究では、うつ病患者で唾液コルチゾールが増加しているという報告があるが、小さな差であったので、確固たる証拠はないとしている。
これまでのSSRIと唾液コルチゾールの関係性における研究では、シタロプラムの単回投与で、唾液コルチゾールとプロラクチンレベルに有意に効果があった、6日間のシタロプラムを使った短期介入は、唾液コルチゾールを増加させる傾向にあった、また、ラットでの15日間のシタロプラムの介入ではHPA系のホルモンであるコルチコステロンやACTHの減少が見られた等の報告がある。

研究者らは、今回は、患者自身ではなく、家族の第一度近親者を対象にSSRIを投与し、ストレスと唾液コルチゾールへの影響を調べている。エンドフェノタイプは、家族の非罹患者において、一般人口より多く見られる。


仮説は、SSRI群はプラセボ群と比較して唾液コルチゾール値を減少させる、そして、自己申告のストレスの大きさは改善するとし、この実験では、抑うつ症状での効果とは異なるHPA軸上における特異な薬物力学的効果を探るとしている。

方法はAGENDAトライアルというフローチャートを用いている。まず、被験者の適性を評価し、登録を行う。神経精神医学での臨床評価の一覧表(SCAN)を使った半構造化面接とDSM-IVを使った構造化面接で人格障害がないと診断されたうつ病患者356人に、その家族とコンタクトを取ることを許可してもらい、その家族の中から、除外基準にかかる人を除いた80人の家族を被験者とした。80人を無作為にSSRI群とプラセボ群に分けて、二重盲検的に、プラセボ群を対照として無作為化並行群間比較試験を行っている。
SSRIの内服を割り当てられた群は41名で、そのうち介入を受け入れなかったのは2名、プラセボ群は39名で、すべてが介入を受けいれた。両群共に中断した人はいなかった。解析は、SSRI群では項目によって35-39名、プラセボ群では36-39名行った。この数値は、データ不足に因るものである。
The AGENDA Trial は、うつ病患者の第一度近親者でSSRIとプラセボによる長期の介入でエンドフェノタイプやその可能性のあるバイオマーカーを調査する最初のトライアルだとしている。(Knorr et al,2009)

結果は、SSRI群はプラセボ群に比して、起床時および一日の唾液コルチゾール値において有意な現象が見られた。起床時と一日の唾液コルチゾール値に差はなかった。起床時の唾液コルチゾール値と攻撃性において相関があった以外には、有意な結果は得られなかった。
4週間の介入のあと、内服による重度の副作用は見られなかったが、かなりの割合で性機能の低下の訴えが聞かれた。また、エスシタロプラムを内服したグループでは、不眠の改善が見られた。

この研究の主な発見は、プラセボ群と比較してエスシタロプラム群で起床時の唾液コルチゾールと一日の唾液中コルチゾールが有意に減少したということである。
したがって、エスシタロプラム10mgの投与による介入は、うつ病患者の健常な第一度近親者おける唾液中コルチゾールを減少させるという仮説が支持された。これらは、薬物力学的特異性を反映しており、唾液中コルチゾールを指標としたHPA系活性の大きな変化を示唆する無作為化臨床試験での最初の所見である。

AGENDAトライアルには、いくつかの利点がある。参加者は、統計分析を含むすべての段階で盲検的に臨床試験を検討できた。トライアル方法と分析は、事前の計画通りに実施され、コンプライアンスが非常に高かった。
一般的な不安を持つ患者の研究では、、SSRIの治療が唾液コルチゾールを減少させることは支持されている(Lenze et al, 2011)。HPA活性を調節する抗うつ剤の効果は、治療の効果に関係するかもしれない。
エスシタロプラムはHPA系でコルチゾール値で測定できる特定の薬物力学的効果をもたらしているようである。しかし、AGENDA Trialは、いろいろな結果をもたらしているので、この二つの介入グループの唾液
コルチゾールで統計学的に有意な差を認めるというには注意が必要であるとも述べている。
今回の発見が、異なったグループ間で比較した時にも、唾液コルチゾールの値がプライマリーアウトカムとして再び現れる必要があると述べている。。




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(自分の意見:)唾液コルチゾールは、日内変動するので何度も測定しなければならない。非侵襲的とはいっても、被験者の協力が必須。ちょっと大変そう。。。

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