2012年5月17日木曜日

神経細胞は記憶の記録係

Liu X, Ramirez S, Pang PT, Puryear CB, Govindarajan A, Deisseroth K, Tonegawa S.
Nature. 2012 Mar 22;484(7394):381-5.

この研究では学習時に活性化した神経細胞を再び刺激することで学習内容を呼び起こすことができるかどうかを調べている。


れまで、学習時に活性化した神経細胞を特異的に再刺激することが困難であったが、最先端の遺伝子工学の技術を応用することでこの問題を解決した。




まず、海馬の神経細胞が活性化すると
光反応性タンパク質(チャネルロドプシン、ChR2)
発現するようなトランスジェニックマウスを作成した。

このままでは、神経細胞の活性化時には
常にChR2が発現してしまう。
そこで、Doxycycline入りの餌を与えている期間は
このChR2の発現が抑えられるよう細工をし、学習時に
活性化した細胞特異的にChR2が発現するようにした。

学習には海馬依存的な学習課題である
文脈的恐怖条件づけを使用している。

行動のプロトコールは、
すくみ反応のベースラインを決定する期間の後、
恐怖条件づけを行い、翌日から新しい環境下で
光刺激をON/OFFしながらすくみ反応を観察。

主要な結果は明快で、恐怖条件づけによって
活性化した細胞群に再び光刺激を与えると
すくみ反応が表れるようになった。
 一方、光刺激を与えない状態ではすくみ反応が
表れなかった。

つまり、人為的な光刺激によって恐怖記憶を
呼び起こしたのである。


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最近、オプトジェネティクスを 
in vivo応用した研究が次々と出てきた。

特定の細胞を1秒未満のタイムスパンで
ON/OFFできるのは非常に魅力的だ。

この技術を記憶の再固定への干渉に応用
するなど、今後10年で恐怖記憶と関連のある
精神疾患の理解・治療法がかなり進みそうな気がする。

うちにも欲しい・・・。

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Photo: Nightscape in Venice, Italy

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