2012年4月24日火曜日

思春期のストレスは成長後の恐怖反応を増強する

Juvenile stress potentiates aversive 22-kHz ultrasonic vocalizations and freezing during auditory fear conditioning in adult male rats.
Yee N, Schwarting RK, Fuchs E, Wöhr M. Stress. 2012 Jan 10.

思春期のストレスフルな体験が、大人になってからの恐怖反応に影響を及ぼすという論文。

以前より若齢期のトラウマ的な体験やストレスによって、将来不安障害を発症するリスクが高まるのではないかと言われていた。

そこでこの筆者たちは、ラットを使って思春期にストレスを与え、成長後に恐怖条件づけ課題を用いて恐怖反応に違いが現れるかどうかを調べた。
これだけだとそんなに新しいアイデアでもないが、特徴は恐怖反応の指標として最も広く用いられているFreezing(すくみ反応)だけでなくUltrasonic vocalization(USV:超音波発声)も測定していること。


具体的には生後27-29日の時に強制水泳させる、高いプラットホームに乗せる、動けないよう拘束するといったストレスをラットに与え、その後は大きくなるまで普通に飼育する。
成体となった生後68-90日に、音と電気ショックを組み合わせた恐怖条件づけをして、翌日に再び音を聞かせるテストを行っている。

この研究によると、恐怖条件づけをした時、Freezingには思春期のストレスの影響は見られなかったが、USVの回数や時間が多かった。そして条件づけ翌日のテストで思春期にストレスを受けたラットはより高いFreezingを示した。

つまり、
・思春期のストレス体験が大人になってからの恐怖反応を高める可能性があること
・行動では観察できなかった変化がUSVの測定で見られた→Freezingだけでなく、USVなど他の指標も重要であること
を述べている。


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超音波発声という名前の通り、ラットやマウスの普段の鳴き声は人間には聞こえない。なのでUSVを測定できる研究室はあまり多くないし(うちも今のところ出来ないし)、注目度も低い。
案外、マイナーな手法を取り入れたら新しい発見があるもんだなぁーと思って紹介した。

前に阪大の先生がさえずるマウス(ヒトの可聴域で鳴く)を作って話題になった。マウスの中では超低音ダンディな声なのかも。
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Photo:  何年か前に行ったベトナム。

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