2012年4月13日金曜日

恐怖記憶と関連のある脳部位は?

Luyten L, Casteels C, Vansteenwegen D, van Kuyck K, Koole M, Van Laere K, Nuttin B.
J Neurosci. 2012 Jan 4;32(1):254-63.

この研究は恐怖条件づけとラット用のPET(micro-PET)を組み合わせて恐怖記憶に関わる脳領域の特定を試みた研究。

恐怖条件づけには海馬依存的なパラダイムと海馬非依存的なパラダイムがあるが、この研究では前者を主な標的としている。
この研究ではmicro-PETを使うことで生きたラットの無傷な脳の代謝を調べることができる。

この手の研究にはこれまで脳の破壊実験や薬物投与による特定領域の不活化、脳摘出後の免疫染色など様々な手法が用いられてきたが、脳へのダメージや死後脳の使用という制限があった。

この研究によると恐怖条件づけをすることで以下の領域が関与するようだ。
代謝が増加した領域
・Bed neucleus of stria terminalis (BST/BNST 分界条床核)
・Cingulate cortex (帯状皮質)
・Entorhinal cortex (嗅内皮質)

代謝が減少した領域
・Somatosensory cortex: barrel, upper lip (体性感覚皮質: ヒゲと上唇)
・Basolateral amygdala (BLA 扁桃体基底外側部)
・Hippocampus (海馬)

著者らは分界条床核に一番注目をしている。
ここは扁桃体の延長領域と呼ばれることもある領域で、海馬依存的な恐怖記憶を思い出すときに重要なようだ。
他の領域についても原著論文には書いてあるので興味がある人は読んでみてください。

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分界条床核は男女で大きさの異なる領域として性差研究の分野では有名な領域でもある。
恐怖記憶や不安障害の有病率には性差があることが知られており、恐怖記憶の性差とからめて今後注目していきたい領域である。

イメージングやマッピングの研究を読むといつも思うが、記憶に関与する領域を4次元で表した動画が見たいなぁ・・・。

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Photo: Nocturnal view of cherry blossoms, Chiba, Japan
今回も代理投稿。

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