2013年6月5日水曜日

SSRIが恐怖を高める

A role for the extended amygdala in thefear-enhancing effects of acute selective serotonin reuptake inhibitortreatment
Ravinder S, Burghardt NS, Brodsky R, Bauer EP, Chattarji S
Transl Psychiatry. 2013 Jan 15;3:e209
 

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はうつ病や不安障害の患者に投与される主要な薬物である。高い治療効果がある一方で、SSRIの服用が不安の増大や自殺念慮のリスクを高めると言う報告がある。実際、動物実験でもSSRIの投与後に恐怖条件づけを行うと恐怖記憶がより強固になったという論文があるが、そのメカニズムまでは解明されていなかった。

この研究は、SSRI投与後の恐怖条件づけで恐怖記憶が強まる背景に、分界条床核(BNST)と扁桃体中心核(CeA)の活性化が関わることを示したもの。

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ラットにSSRIを投与し、1時間後に音と電気ショックを関連付ける恐怖条件づけをした。恐怖条件づけから2時間後、細胞の活性化のマーカーとされるArcの発現を調べた。

その結果、扁桃体の中心核(CeA)において、SSRIを投与し、なおかつ恐怖条件づけをしたラットでのみArcの発現が増加していた。扁桃体の外側核(LA)、基底核(BA)においてもArcの発現は増加していたが、これはSSRIを投与してもしなくても同じだった。


CeAは恐怖反応(すくみ反応)の発現に重要な部位である。音や電気ショックといった刺激の情報はLAからBACeAへと伝達され、CeAからすくみ反応を制御する中脳中心灰白質へと伝わる。
すくみ反応の発現に関わる他の部位としてもう一つ筆者らが注目したのがBNSTである。CeAが単純な恐怖条件づけに必須なのに対して、BNSTはもう少し複雑な恐怖と関連するらしい。恐怖体験を受けた後、恐怖とは関係ないはずのものまで怖がってしまう「般化」や、場所と恐怖を関連付ける文脈的恐怖条件づけに関与するそうだ。そこでBNSTについても調べたところ、BNSTでもSSRIを投与して恐怖条件づけするとArcの発現が増加していた。


次に、CeABNSTの恐怖を強固にすることへの関与を証明するため、それらの部位にSSRIを直接投与した。恐怖条件づけ前にBNSTSSRIを投与すると、翌日のすくみ反応が増加した。しかしCeAへの投与では効果が見られなかった。

そこでBNSTSSRIを投与した後のCeAArc発現を調べたところ、発現が増加していた。つまり、この研究によりSSRIBNSTの活性化を通してCeAを活性化させ、恐怖記憶を強固にしていたことが分かった。


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SSRIに不安や恐怖を強めるなんて副作用があることを初めて知りました。

今後の発展でどうにかなるといいけどなー。

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Photos:
A daylight in the early summer;
Sunlight through Japanese Maple leaves, Chiba University, Chiba, Japan

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