
Kawasaki M, Yamada Y, Ushiku Y, Miyauchi E, Yamaguchi Y
Scientific Reports 2013; 3: 1692
-コミュニケーション時の2者の脳波を同時に計測し解析する手法を確立-
上のように、論文を報告した理研からプレスリリースとしても発表されたので、あえて詳細に解説する必要はないかもしれない。
ここでは簡潔に紹介する。
*********************
「仲が良い人とは行動のリズムが合う」というように、行動のリズムが同調することと、相手を近しい存在に認識することに関係があることが知られている。
これを逆に利用して、仲良くなりたい相手の動作を真似て見せることで、親近感を抱かせるというテクニックもある。
これまでの研究で、動作的な同調が、脳波リズムの同調を伴うことが示されてきた。
それなら会話にもそれが当てはまるのでは?と考えられるが、安直に会話をタスク化するのには課題があった。というのも、会話には動作的リズム(スピードやタイミング)以外にも、意味や文脈といった要素があるために、そのいずれが脳波の同調を招くのかはっきりしていないのである。
本研究では、会話から意味や文脈の成分を除外した「実験的な会話」として、交互発話課題を開発した点で新規性を主張している。
*********************
脳波計を装着した二人の被験者を向かい合わせに座らせ、以下のように互いにアルファベットを発話するよう指示した。
被験者1「A」「…」「C」「…」「E」「…」「G」「…」「B」 くりかえし
被験者2「…」「B」「…」「D」「…」「F」「…」「A」「…」 くりかえし
これと同じ形で、被験者は、機械的に話すロボットとの交互発話課題も受けた。
発語の時間的長さと、相手の発語から自分の発語までの間隔を発話リズムの指標にした。
その結果、これらの発話リズムの指標は、対人条件では対ロボット条件よりも、相手とリズムが同調しやすいことを示された。
対人条件と対ロボット条件における課題中の脳波を、フーリエ変換により周波数ごとに見ていくと、θ/α周波数帯域のバンドパワーに差があることがわかった。
続いて、このθ/α帯域のみを抽出し、二人の被験者で同調の程度を見ることにした。
そのためにθ/α帯域脳波から相互相関関数を求め、脳波同調の指標とした。その結果、側頭部~頭頂部のいくつかのチャンネルで、脳波同調の指標(相互相関関数)は、上で求めた発話リズムの指標と正の相関を示した。
これはつまり「発話リズムが同調しやすい相手とは、脳波リズムも同調しやすい」と解釈できるものである。
このたび示された脳の領域は、聴覚的な作業記憶課題で、θ/α帯域の脳波が増強することが知られていた。
筆者らは交互発話において、相手のリズムに関連した情報を作業記憶に留めることで、発話リズムの同調を生じたのではないかと述べている。
*********************
ずいぶん久しぶりの更新になってしまった。
被験者間の脳波の時間的ずれについて、論文中で触れて欲しかったなあ。
あと、Fig. 3Eが存在しないとか、記載が重複しているところがあるなど、編集上の不備が目立った。
Natureグループなのに、SciRep誌はだいじょうぶかな…。
あと、Fig. 3Eが存在しないとか、記載が重複しているところがあるなど、編集上の不備が目立った。
Natureグループなのに、SciRep誌はだいじょうぶかな…。
******************************************
Photo: Calendula officinalis (pot marigold),
Chiba, Japan
0 件のコメント:
コメントを投稿