2013年2月15日金曜日

サイコパスの脳




Reduced prefrontal connectivity in psychopathy
Motzkin JC, Newman JP, Kiehl KA, Koenigs M
J Neurosci. 2011; 31(48):17348-57

私たちは日頃何が好きだとか嫌いだとか、色々な感情を持って生活していて、それがあたりまえだと思っている。しかし世の中には感情が乏しく、他者への共感や罪悪感を感じにくい人々がいる。
サイコパス(精神病質者)と呼ばれる人たちである。

サイコパスは他者を思いやることがなく、平気で嘘をつき、責任感がないなどと言われている。衝動的で、犯罪歴がある人が多いのも特徴の1つ。成人の囚人のうち1/4はサイコパスであるという説もあるようだ。

その一方で、口が達者で表面的には魅力的に見えるともいわれる。適応したサイコパスは、表面的には普通の情動をもっているかのように振る舞う術を身につけていて、一見その人がサイコパスだとは分からない。

なにやら怖い、という印象を受けただろうか。

今回紹介する論文は、そんなサイコパスと呼ばれる人の脳を非サイコパス者(ここでは便宜上、健常者と呼ぶ)と比較し、脳内のコネクションが弱いことを報告したもの。


被験者は犯罪を犯した人を収容している矯正施設の人々で、PCL-Rというテストのスコアでサイコパスかそうでない人かを分類している。
このテストにより分類された、サイコパス囚人群と非サイコパス囚人群の比較を行った。

まず初めに使ったのは拡散テンソル画像。脳内のコネクション(神経線維連絡)を調べる手法である。するとサイコパスは前頭葉と側頭葉を結ぶ鉤状束という連絡が弱いことが分かった。

次にfMRIを使って前頭葉とのコネクションが弱い部位を探した。この論文で用いているのはResting state fMRIで、タスクなどは行わずに安静時の脳活動を見るものである。
注目したのは情動をつかさどる扁桃体と、安静時の脳活動に関わる楔前部/帯状皮質。
その結果、そのどちらのコネクション(前頭皮質と右扁桃体、前頭皮質と楔前部/帯状皮質)もサイコパスでは弱かった。

従来、サイコパスは脳の器質的な異常がもとで上記のような性格を示すということは知られていた。
この論文によって、サイコパスの脳では実際に情動に関する脳のネットワークがうまく働いていない可能性が示された。


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最近では、サイコパスであっても全員が犯罪者的な傾向を持つわけではないと言われている。
その冷静さ・冷酷さをうまく活用している人もいるそうだ。
それにしても感情に振り回されずに自分の利益を追求し、周りからは魅力的に見えるのだとしたらサイコパスってかなり生き残る能力が強いということではないだろうか。

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