2012年6月7日木曜日

fMRIでみた意志決定の年齢差


Aging and decision making under uncertainty: behavioral and neural evidence for the preservation of decision making in the absence of learning in old age.

Hosseini SMRostami MYomogida YTakahashi MTsukiura TKawashima R.

Source

Department of Management Science and Technology, Graduate School of Engineering, Tohoku University, Aoba-ku, Sendai, Japan.
Neuroimage. 2010 Oct 1;52(4):1514-20.

   加齢が不確かな状況下での意思決定に影響しているのか、行動と神経学的側面から論じている。
これまでの脳画像研究では、加齢に伴って前頭葉、頭頂葉が急速な割合で萎縮することが報告されている。このことから、認知機能の低下が予測され、高齢者が日常、意思決定する上でのリスクが高くなると考えられるが、年齢による経験値でそのリスクは相殺されている可能性がある。さらに、結果を予測するための情報が与えられている場合には、有利な意思決定が出来ると報告されている。しかし、学習を求められるようなタスク、例えば、刺激と反応の関係性の習得を求められるようなタスクでは、若い人に比べてパフォーマンスが低下するとの報告もある。
 
  本研究は、学習することを求めず、予測情報のみを与えた場合の意思決定の際の、年齢による相違をfMRIと合わせて検証している。


   18-25歳の若者14名と61-77歳の高齢者14名に予測条件タスクとコントロール条件タスクを行っている。予測条件タスクは、2枚の白いカードのうち、一方が70%、もう一方が30%の確率で裏が黄色であるという情報を与えておく。どちらが黄色であるか予測してもらい、出来るだけ多く黄色を選んでもらうというタスクである。コントロール条件タスクは、2枚の白いカードのうち、一方が黄色に変わるので、単純に黄色に変わった方を選択するというものである。要するに、どちらが黄色かを予測して選択することと、分かっていて選択することとを比較する。
 
  結果は、正答率(黄色を当てた回数の割合)に、年齢差はなかった。しかし、選択までの反応時間は、予測条件では有意な差で高齢者の方に時間がかかっていた。コントロール条件で、反応時間に有意な差はなかった。

  実験後、さらに、どのように判断していたかという“戦略”についても質問紙調査している。高齢者は、70:30という数値に重点をおいて判断をしていたことがわかった。一方、若い人はもっともらしいと思われる選択(おそらく70:30のこと)を続けたあと、時々ギャンブル的な選択をしていたことが分かった。

   fMRIの結果は、意志決定の際に活性化する脳領域に年齢による相違は見られなかった。唯一、高齢者では右頭頂下葉で活性化の低下が見られた。それは、加齢によるものか、行動によるものかという論点で、本研究の結果からは行動(戦略)によるものだとしている。理由は、若い人は頭頂葉に頼る戦略を用いており、高齢者では前頭葉に頼る戦略を用いているからではないか、としているが、論拠については述べられていない。




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年をとっても意志決定のレベルを保つには、情報と考える時間と経験値が必要なんだと理解しました。ふむ。

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