2012年2月21日火曜日

MALDI-IMSで海馬の代謝物イメージング



(カイニン酸誘導発作後マウスの海馬ニューロンにおけるエネルギー動態を質量分析で測定し、可視化した...意訳です)
Sugiura Y, Taguchi R, Setou M.PLoS One. 2011 Mar 22;6(3):e17952.

研究室では少し話題のPLos One誌、2011年の論文。
浜松医科大の瀬藤先生の教室だが、同教室は質量顕微鏡を用いた業績で有名です。
技術を習いに行ってもいいかもしれません。


さて、論文だが、matrix-assisted laser desorption/ionization (MALDI) imaging mass spectrometryを用いてマウス海馬のCA3領域を見てみましたというもの。

マウスに対しては、カイニン酸を用いて、てんかん発作を誘発していて、その後30分後、3時間後の海馬スライスを用いて、エネルギー消費(ATP,ADP,AMP量から)を時系列的に見ています。

カイニン酸は代表的なグルタミン酸受容体アゴニストでもあり、過剰投与でてんかん発作を起こす。

MALDI-IMSというのは初めて知ったが、組織の薄切切片(この論文では5μm厚)を用いて、マトリクス状(例えば10μx10μとか。今回は20μ)に網羅的な質量分析を行う。
m/z(mass to charge ratio)で示される指標範囲の物質が検出可能で、今回は100-1000の範囲。
詳しくはFranck et al., 2009. Mol Cell Proteomicsを参照のこと。

解析対象となる海馬CA3領域は、カイニン酸受容体が豊富で、カイニン酸への親和性が高く、AMPA受容体も多く分布していることから、興奮毒性にさらされやすい。

今回の解析で、発作誘発後30分後における同部位でのATP消費は非常に大きく、それは3時間後でも回復が不十分であることがわかった。
著者たちは、それがカイニン酸発作誘発後のCA3領域選択的細胞死を反映していると推測している。

尚、MALDI-IMSによる結果は、通常キャピラリー電気泳動式質量分析(CE-MS)でも確認された。

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このように切片を用いて、任意の部位で代謝物質動態を可視化できてしまうのは、すごいことだ。
教室の研究でも使いたいところだけれども、コストはどれくらいかねぇ。

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