研究室の抄読会での学会レビュー企画、第2回目。
（9月14～17日にパシフィコ横浜で開催された第34回神経科学大会Neuroscience2011）
NIRS（fNIRS）とfMRI関連の演題からピックアップ。
以下は一部抜粋。
記号と数字は演題番号。
学会HPで公開されているタイトルや抄録以上の内容を含まないようにしている為、本ブログ上でそれぞれの記事はごくさらっとしか触れない。
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[P3-u02]
NIRSデータにおける頭皮血流成分の除去
NIRSデータからノイズとなる頭皮血流成分を除去し、脳自体の血流信号を明確にしたいというのがNIRSを使う人たちの共通の悩みなのだ。
本法はMultidistance probe arrangementとも言われる。
入光部とセンサーの距離を、定番（30mm）より短く設定したチャンネルを「皮膚血流」と見なし、間隔30mmのチャンネルから差し引いて使おうというもの。
本研究の良いところは、主成分分析と一般線形モデルを利用したところだろう。
実際に脳卒中後の患者が、患側の手を動かすときに現れる脳全体の血流増加（血圧上昇によるものと推定）をマスクし、手の運動関連領域の脳賦活を認めたという。
すごいことだ。
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[P3-t15]
fNIRS計測における脳機能信号と全身性血流信号の分離-血流変化の様相の違いに基づく分析法の提案-
NIRSのノイズ除去についての研究をいくつかやっているグループの発表。
NIRSデータの変動のうち、脳機能に関連したものと、体動などのアーチファクトに関連したものは成分ごとの動きが違う。
実際には混じり合って検出されるこれらの影響を、計算だけで除外することができた、と紹介していた。
論文化を大変期待している研究だ。
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[P4-s18]
未内服成人注意欠如多動性障害と自閉性障害の抑制課題施行中の前頭葉血流変化
鑑別診断に迷う成人のADHDとASDについて、Go/No-Go課題みたいなtaskを行ったところ、前頭前野領域の活動に違いが見られたという。
今後、診断に迷ったときの客観評価に使えるかもしれない。
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[P2-v11]
NIRS及びfMRIを用いた安静時大脳皮質血流動態の同時計測
Resting state でのfMRIとNIRSの同時計測は全く世界初のことだろう。
頭部を取り巻くNIRSの14チャンネルのうち12チャンネルで、BOLD信号との相関が見られたとのこと。
発表者にはResting state NIRSの先行研究があった。
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[S3-F-1-2]
二台の機能的MRIを用いた見つめ合いおよび共同注意課題中の神経基盤と二個体間の機能的結合
文字通り。
MRI装置内に入った二人が、脳機能を計測されながら、互いに注視したり、しなかったりする。
健常発達者とASD者で、共同注視することで生じる脳活動に違いが見られたというもの。
ちょっと関係ないが「プレコックス臭さ」についても出来ないかな、と想像した。
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あと、学会全体でテーマ毎の演題数について概観。
fMRI 45題に対して、NIRS 15題
この数年のNIRSの演題数は、fMRIの1/3～半分程度で推移している。
一方、NIRSの解析方法関連の研究は少数ながら毎年コンスタントに出ている。
解析方法の曖昧さがNIRSのネックにならないよう、注視したい分野だ。
ついでに、今年の11月にアメリカ・ワシントンDCで行われる、神経系で世界最大の学会：Neuroscience2011、通称SfN（Society for Neuroscience）でもちょっと検索。
NIRS関連が6題に対し、fMRIは301題と圧倒的な演題数だった。
やっぱりNIRSは日本出身の技術だし、まだ欧米では弱い。
あとコストが高いという印象を持たれているのみたいだ。
さてSfNの演題からその内訳で、特筆すべきはDefault mode network関連が75題と多いこと。
Resting state networkなどの別名の通り、「とくに何もしていないときの脳活動とネットワークのあり方」をみる研究だ。
興味深いので、頑張ってたくさん聞きに行こうと思った。
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Photo:
Yokohama Minato Mirai, Yokohama, Japan
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