2010年6月7日月曜日

何を考えているか、当てちゃうぞっ

Predicting visual stimuli on the basis of activity in auditory cortices.
Kaspar Meyer, Jonas T Kaplan, Ryan Essex, Cecelia Webber, Hanna Damasio & Antonio Damasio
Nat Neurosci. 2010 Jun;13(6):667-8

フィニアス=ゲージの骨とMRI画像から鉄の棒が刺さった場所を検索したことで有名な、ダマジオ夫妻率いるグループの報告。
こちらは骨とは関係なく、fMRIとMultivariate pattern analysis (MVPA)を用いた、Brain decodingの話題だった。

Mind's ear のrepresentation(脳内表現)を調べた。ようするに被験者の想像した音を、脳画像から当ててみせるという研究。

音を連想するような無音の視覚刺激(ビデオ)を9種類、繰り返し呈示して、
その際にfMRIで得られたBOLD信号にMVPAを行った。ビデオは5秒、いずれも無音で、動物(吠える犬、鳴く牛、鳴く鳥)、楽器(バイオリン、ベース、ピアノ)、その他(チェーンソー、花瓶の割れる音、コインの落ちる音)の9種類(3カテゴリー×3種類)を用意した。
被験者はEvocativity(そのビデオがどれくらい音を想起させるか)を点数で評価した。
この研究ではprimary auditory cortex(無音ビデオなのに!!)にRegion of Interestを設定してMVPAを行い、複数種の刺激間の弁別がBOLDからできるかどうかを9種類の刺激についてそれぞれ検討した。9種類から2種類ずつ、すなわち総当たり式に36通りの組み合わせで解析を行い、うち26通りで2種類の刺激間の弁別が出来た。これから、①音の想起Mind's earにより、ごく低次な聴覚野に音の種類がrepresentationされた、と言える。従来、Sensorimotor areaやvisual areaでは、低次領域でのrepresentationが確認されていたが、低次聴覚系では初めてであるという。

また、これらの弁別能は、Evocativityと相関した。これから、②音を強く想起させるものは、より明瞭なrepresentation patternを呈する、と言える。
さらに、3つのカテゴリーにまとめた場合、カテゴリー間の弁別も可能であった。すなわち、③概念(カテゴリーの違い)も低次聴覚野に表現されていると言える。概念といえば前頭前野というイメージがあるので、ちょっと驚きだ。

コツとして、fMRI撮像の繰り返し時間を11秒と長く設定し、ビデオを見る間にスキャン音を聞かせないように工夫し、音のrepresentationをみやすく(BOLDを明瞭に)したそうな。



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MVPAは所定の領域内の賦活パターンを元に、Neural representationを調べるもの。MultivariateではなくMulti-voxelと呼ぶ場合もある。


2音の弁別なので、全く弁別不能の場合の確率は0.5だが。これが0.6~0.7になったら「弁別できる」と評価している。この程度でいいの?これでNature Neuroscienceに載るの?という気持ちがあるが、これが現在の科学レベルなのだろう。

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この研究は①decodingについて→Brain machine interface研究、②概念について→思考研究、に繋がりそうだ。

MRIは装置のサイズやコストの問題で、BMIには直結出来ないけど、それらの問題を克服したNIRSが代理になりうるだろう。



前回の投稿からちょっと間が空いてしまったなあ。

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