2013年1月29日火曜日

うつ病の認知行動療法~イギリスに学ぶ~

Cognitive behavioural therapy as an adjunct to pharmacotherapy for primary care based patients with treatment resistant depression: results of the CoBalT randomised controlled trial.
Wiles N, et al.  Lancet 2012 Dec 6. pii: S0140-6736(12)61552-9.

過去20年間のうつ病治療は、第一選択が薬物療法であるが、十分に効果がみられるのは3人に1人で、効果を示さない患者に対しては薬の種類や量を変更するなどされるのみで、標準的な代替療法に関するエビデンスは少ない。

本研究は、通常の薬物療法に認知行動療法(Cognitive Behavioural Therapy:以下CBT)を併用した場合と通常の薬物療法のみを行った場合とを比較し、CBTが薬物療法の補助的療法となりうるか、その効果を検証しようという試みである。

18~75歳の男女469人のうつ病患者を、通常の薬物療法に加えCBTを行なう群と通常の薬物療法のみを行う群の2群に、無作為に割り付けた。
CBTは12セッション行い、その間、薬物の変更は必要に応じて行われた。
CBT終了後、3,6,9,12か月に渡り、継続的に追跡調査をした。
プライマリーアウトカムは、6か月後のBDIスコアで、セカンダリーアウトカムは、継時的に下がるBDIスコア(BDI<10)(12か月後)と生活の質(満足度)(short form health survey12 : SF12)の向上であった(6か月と12か月後)。

結果は、
6か月後、通常の薬物療法のみを行った群では、BDIスコアの平均が24.5点(SD=13.1)で、緩解(BDI<10)に至った人は、213名中32名(15%)であった。通常の薬物療法+CBTを行った群では、BDIスコアの平均が18.9点(SD=14.2)で、緩解(BDI<10)に至ったのは206名中57名(28%)であった。
12か月後、通常の薬物療法のみを行った群では、BDIスコアの平均が21.7点(SD=12.9)で、緩解(BDI<10)に至った人は、198名中36名(18%)であった。通常の薬物療法+CBTを行った群では、BDIスコアの平均が17.0点(SD=14.0)で、緩解(BDI<10)に至ったのは197名中78名(40%)であった。

不安や抑うつの指標であるPHQ-9やGAD-7も同様に、CBTを行った群で有意に改善されており、生活の満足度においてもより改善傾向であった。
通常の薬物療法+CBTを行った群では、197名中109名(55%)でうつ症状の軽減が図られ、通常の薬物療法のみの群(198名中62名:31%)より、およそ1.8倍の効果が得られた。

この結果により、CBTがうつ症状の軽減に効果があることが検証され、薬物療法の補助的療法として有用であることが、示唆された。

しかし、多くの国では、まだCBTになじみが薄く、費用も高価であることから普及が困難となっている。

イギリスやオーストラリアでは、CBTへのアクセスを容易にする試みとして、Increasing Access to Psychological Therapies(IAPT)を通じて、セラピストの育成やセラピーの質の向上に力を注いでいる。


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国の経済状況の悪化がうつ病発症率に関連があるとするならば、第二次大戦後低迷が続いたイギリスに学ぶことは多いと思う。同じ島国民族でもあり・・。

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