2011年9月5日月曜日

GABAA受容体は海馬神経新生を時空間特異的に制御

Spatiotemporal specificity of GABAA receptor-mediated regulation of adult hippocampal neurogenesis
Venceslas Duveau et al

神経新生にGABAの伝達が重要であることは以前から報告されていたけれども、GABA受容体のどのサブユニットがどんな役割をしているのかはまだ解明されていませんでした。
GABAA 受容体にはポストシナプスに発現していてPhasicな抑制に関与するものと、シナプス外に発現していてTonicな抑制に関与するものがあります。この研究ではPhasicなGABAA受容体に含まれるα2サブユニット、TonicなGABA受容体に含まれるα4、δサブユニットのそれぞれのKOマウスで海馬Dentate gyrus(DG)の神経新生がどう変化するかを調べています。

その結果、α2とα4サブユニットはそれぞれ神経新生に特異的な役割を持つことがわかりました。

新生した細胞を見るためBrdUやレトロウイルスベクターのInjectionを行っています。
α4KOでは、WTとくらべ新生細胞の増殖が50%ほど多く、Injectionから14、28、42日後のタイムポイントで樹状突起が短く複雑性に欠けるものとなっていました。新生した細胞はDGのSGZ(subgranular zone)からGCL(granule cell layer)へ移動していきますが、α4KOでは移動距離が減少していました。そしてパッチクランプにより、α4KOマウスの新生細胞にはTonicGABAA受容体による電流が無いこともわかりました。

α2KOでも樹状突起の形成異常がありましたが、それは Injection28日以降で見られ、α4KOより遅かったです。つまりはじめは複雑な樹状突起ができているけれどもかなり刈り込みされてしまうようです。SGZからの移動はα4KOとは逆で、WTよりさらに移動距離が長くなりました。刈り込みには興奮性の伝達が関与しているということで Glutamateなシナプス形成を薬物で阻害したところ、WTでは樹状突起の形態にはとくに変化がなかったのに対しα2KOでは樹状突起の長さや複雑さ が増加しました。α2KOにより、Glutamateのほうにも何か代償性の変化が起こっているのかもしれません。

δKOはこの研究ではWTとの差は見られませんでした。著者たちはKOしたことで何か代償する変化が起こっているか、または発生過程ではδサブユニットは生後3週齢くらいまで発現がないそうなので、神経新生でも初期の過程ではまだ発現していない、働いていない可能性があるかもと言っています。

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なにやらFeatured articleとのことだったので読んでみた。
あまり神経新生には詳しくないけど、大人でも海馬の神経新生が起こるのはうれしいけど周りの環境や新生細胞自体に不具合(GABAとかGlutamate の伝達がうまくいかない)があるとせっかく新しい細胞が生まれてもいまいちなのでしょうか。新生の増減だけでなくこういうのもアルツハイマーとかに関係してきそう。

最近ラボのみんなが読んでなさそうなものを抄読会でやろうとして、馴染みないから読みづらいのにそのくせ準備がぎりぎりになるというパターンから抜け出せない。

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