2013年12月2日月曜日

Neuroscience2013(SfN) 学会参加の旅行記2

朝食にしようと前夜に買っておいた青リンゴが、大いに酸っぱくて弱った。
マフィンを食べた者は甘くて弱っていた。

朝食でくたびれるのも癪なので、早々に身支度して出かけることにした。




メトロEmbarcadero駅で下車、Ferry Plaza Farmers' Marketへ。
アメリカはチェーン店のようにどこへ行ってもFarmers' Marketという名前で朝市をしているようだ。サンフランシスコのFarmers' Market はワシントンDCよりもずっと出店が多い。

2013年12月1日日曜日

Neuroscience2013(SfN) 学会参加の旅行記1

神経科学系では世界最大の学術集会、Neuroscience2013に参加した。

例によって我々の研究室と姉妹研究室から、複数のポスター演題を発表したので、みんなでぞろぞろと旅行することになった。

以下はその旅行記。

(以降の記録は複数の同行者による共著である。各自が学会発表や興味のある分野の発表を聞きに行った上で、空き時間を埋めるべくそれぞれ活動した記録の集成であって、まともに学会に参加せず全行程を遊び抜いた者がいたことを意味するものではない。)

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夕方の成田空港へ集合。成田空港の国際線ターミナルの雰囲気は、海外旅行へ行く人々の期待がはやる雰囲気を作っているように感じられる。

2013年9月12日木曜日

MRIの中でうつ病を治そう

Real-Time Self-Regulation of Emotion Networks in Patients with Depression
Linden DE, Habes I, Johnston SJ, Linden S, Tatineni R, Subramanian L, Sorger B, Healy D, Goebel R.
PLoS One. 2012;7(6):e38115. doi: 10.1371/journal.pone.0038115. Epub 2012 Jun 4.


脳の画像研究といえば、観察による病態解明が主体である。

しかし近年、画像化技術を疾患への介入(治療)に活かそうという流れが現れて、注目を集めている。

本研究はその王道とも言えるもの。うつ病の患者にfMRIを用いたNeurofeedbackを行い、なんと症状を改善させたという報告である。

2013年9月8日日曜日

うつ病発症の個人差につながるNMDA受容体サブユニット

Bo Jiang et al.  Biological Psychiatry, 2013:74:145-155.

Nucleus accunbens(側坐核)は線条体の一部であり、腹側被蓋野からのドパミン入力を受けることから、薬物依存や報酬系との関連で研究が進んできた場所である。下図に示すように脳内の様々な領域と、多様な神経伝達物質を媒介した連絡があることに注目したい。

DA:ドパミン、5-HT:セロトニン、Glu:グルタミン酸
NE:ノルエピネフリン、GABA:γアミノ酪酸
Shirayama et al, Curr.Neuropharma,2006より改変
 さて、うつ病の症状の1つに、以前は「面白い、楽しい」と思っていたことに興味を持てなくなるというように、快感消失とか無快楽症(anhedonia)がある。この背景に、側坐核の関与する脳内報酬系の異常が考えられている。

 本論文の著者たちは、側坐核へのグルタミン酸神経の関与から、慢性的なストレスが側坐核におけるNMDA受容体(グルタミン酸受容体の1つ)のシナプス可塑性に果たす役割に変化をもたらし、うつ病発症に関わることを考えた。




2013年9月5日木曜日

MEMRIを用いた脳活動イメージング

In vivo auditory brain mapping in mice with Mn-enhanced MRI
Yu X, Wadghiri YZ, Sanes DH, Turnbull DH.
Nat Neurosci. 2005 Jul;8(7):961-8.

今回紹介する論文は無侵襲で動物のin vivo脳活性を調べることが出来る方法としてマンガン造影MRI (Mn-enhanced MRI, MEMRI) を提案している論文です。MEMRIについては日本語の論文がいくつかありますので、そちらを参考にしてください(論文1, 論文2)

今回の論文ではMEMRIを使うことで、非侵襲的かつ長期間に渡って同一個体の脳活性を追うことが可能であることを示しています。
  

2013年6月5日水曜日

SSRIが恐怖を高める

A role for the extended amygdala in thefear-enhancing effects of acute selective serotonin reuptake inhibitortreatment
Ravinder S, Burghardt NS, Brodsky R, Bauer EP, Chattarji S
Transl Psychiatry. 2013 Jan 15;3:e209
 

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)はうつ病や不安障害の患者に投与される主要な薬物である。高い治療効果がある一方で、SSRIの服用が不安の増大や自殺念慮のリスクを高めると言う報告がある。実際、動物実験でもSSRIの投与後に恐怖条件づけを行うと恐怖記憶がより強固になったという論文があるが、そのメカニズムまでは解明されていなかった。

この研究は、SSRI投与後の恐怖条件づけで恐怖記憶が強まる背景に、分界条床核(BNST)と扁桃体中心核(CeA)の活性化が関わることを示したもの。

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2013年5月30日木曜日

会話のリズムが合う相手とは脳波も同調する

Inter-brain synchronization duringcoordination of speech rhythm in human-to-human social interaction
Kawasaki M, Yamada Y, Ushiku Y, Miyauchi E, Yamaguchi Y
Scientific Reports 2013; 3: 1692

-コミュニケーション時の2者の脳波を同時に計測し解析する手法を確立-

上のように、論文を報告した理研からプレスリリースとしても発表されたので、あえて詳細に解説する必要はないかもしれない。

ここでは簡潔に紹介する。

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「仲が良い人とは行動のリズムが合う」というように、行動のリズムが同調することと、相手を近しい存在に認識することに関係があることが知られている。
これを逆に利用して、仲良くなりたい相手の動作を真似て見せることで、親近感を抱かせるというテクニックもある。

これまでの研究で、動作的な同調が、脳波リズムの同調を伴うことが示されてきた。
それなら会話にもそれが当てはまるのでは?と考えられるが、安直に会話をタスク化するのには課題があった。
というのも、会話には動作的リズム(スピードやタイミング)以外にも、意味や文脈といった要素があるために、そのいずれが脳波の同調を招くのかはっきりしていないのである。

本研究では、会話から意味や文脈の成分を除外した「実験的な会話」として、交互発話課題を開発した点で新規性を主張している。